精巣上体炎(睾丸の上の部分の痛み・腫れ)
① 精巣上体炎とは?その症状、原因は?
精巣上体炎とは下図のように精巣の上にくっつくように存在する精巣上体に感染・炎症を起こす病気です。
精巣上体は、副睾丸とも呼ばれており、炎症を起こした場合、副睾丸炎とも呼ばれることがあります。
主な原因は、逆行性の尿路感染で、尿中の菌が精巣上体へ行き感染を起こします。
症状は、精巣上体の腫れ、痛み、また、熱が出ることもあります。
ひどくなると膿瘍(うみ)がたまることもあり、陰嚢の皮膚が赤く腫れあがります。
② 精巣上体炎の診断は?
以下の診察、検査を行います。
① 診察、触診
陰嚢を観察させていただきます。精巣部分の上が腫れているかどうか確認します。
② 尿検査(尿定性・尿沈渣検査)
尿に濁りがないか確認します。
一般的に尿沈渣検査で、白血球が1視野あたり5個以上あると尿路感染症などを疑います。(通常、尿中には白血球はありません。)
当院では、素早く測定できる尿沈渣測定機器を導入しています。
③ 尿培養検査
尿中に細菌が歩かないか確認します。
また、細菌がある場合は抗生剤がきくかどうか感受性を確認します。
この検査や数日から1週間程度時間がかかります。
④ 性感染症検査(クラミジア・淋菌PCR検査)
性感染症による精巣上体炎を疑う場合は、検査を行う場合があります。
尿道炎症状(尿道から膿がでるなど)がある患者さんはご注意ください。
⑤ 採血検査
熱が高い場合、炎症の程度を把握するため採血検査を行う場合があります。
白血球やCRPという炎症のマーカーを確認することがあります。
⑥ エコー検査・ドップラーエコー検査(血流をみるエコー検査)
症状が軽い場合、腫瘍やほかの炎症性疾患、また比較的若年者では精索捻転症(さいさくねんてんしょう)を疑うばあいなどはエコー検査を行う場合があります。
精巣上体炎を認めた場合、上記のすべての検査が必要というわけではありません。
症状等に合わせて適宜検査を行います。
③ 注意すべき鑑別疾患は?
精巣上体の腫れはしばしば、診断が難しい場合があります。
重要な鑑別診断のひとつとして、精索捻転症(せいさくねんてんしょう)があります。精巣捻転症とも呼ばれます。
精巣に流入する血管や精管の束を精索と呼びます。
この部分が、動きによりねじれてしまう病態です。
血管の捻転により血流が低下、遮断され、そのまま時間が経過してしまうと精巣が壊死してしまうことがあります。
症状は、強い痛みを睾丸の部分に感じます。年齢は25歳以下の若年者に多いです。
様子を見ずにすぐに泌尿器科を受診しましょう
精索捻転症は、緊急疾患で捻転を疑った場合は、確認を含めて緊急手術で精巣捻転解除および精巣固定術が必要です。
捻転のゴールデンタイムは約6時間以内といわれております。
それ以上時間が経過すると捻転を解除しても機能が戻らないことが多く、場合によって摘除になってしまう可能性が高くなります。
よって、精索捻転症を疑う場合は、夜間でも朝まで経過をみないで出来るだけ早急に泌尿器科の先生の診断を受けてください。
④ 精巣上体炎の治療とは?
- 原因の菌に対する、抗菌薬を投与します。クラミジア、淋病などの性病による精巣上体炎は、その原因に対する抗菌薬を使用します。
- 痛みや発熱がある場合は、解熱鎮痛剤を投与することがあります。さらに、陰嚢をアイスパックで冷やすことも症状緩和に有効な場合があります。(ただし、直接あてないように凍傷などにはお気をつけください。)
- 膿瘍を形成した場合は、切開排膿することもあります。