PSA腫瘍マーカー高値についての情報
- Q1)PSA高値といわれました?どうしたいい?
- Q2)PSA高値の患者さん、どっちがリスクが高い?PSA変化率について
- Q3)PSA高値の患者さん どっちがリスクが高い?PSA濃度について
- Q4)最近のphi(プロステートヘルスインデックス)って何ですか?
Q1)PSA(前立腺特異抗原)が高いですがどうしたらいですか?
PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーです。腫瘍マーカーというと悪者のイメージでしょうか。
PSAは、前立腺細胞内にあるタンパク質で細胞が壊れると血液中に漏れ出します。
そうした状況で採血すると上昇しています。
PSA上昇の原因
- 前立腺がん
- 前立腺肥大症
- 前立腺炎(急性・慢性)など
上記の通り、PSAが上昇しても必ずしもがんに限るわけではないのでご安心ください。がんを鑑別する意味で精密検査が必要です。
PSA高値の精密検査とは?
①PSA再検査
急性炎症などの場合では、再検査で低下していることもよくあります。
高値が続く場合は、更なる精密検査が必要です。
②尿検査
尿中に白血球が出ている場合などは炎症によることがあります。
③その他の採血
- PSA F/T比
Total PSAに対するfree(蛋白非結合型)PSAの割合(F/T比)が前立腺がん患者では非癌患者に比べて有意に低くくなります - phi(prostate health index, プロステートヘルスインデックス)
以下の年齢階層別以下の値では検査が可能です。
・50~64歳であればPSA値3.0~10.0ng/mLの範囲
・65~70歳未満であればPSA値3.5~10.0ng/mLの範囲
・70歳以上であればPSA値3.5~10.0ng/mLの範囲
本検査の詳細は「Q4)最近のphi(プロステートヘルスインデックス)って何ですか?」をご参照してみてください。
④エコー検査
癌の場合、エコーで黒くみえる(低エコー像)場合があります。
⑤MRI検査
近年、MRI特に造影でのMRI検査による診断が重要です。
PIRADSといった前立腺癌を疑うかどうかのスコアリングがあります。1から5まで5段階あり、5段階あり、3で約30-50%、4になると60-70%、5になると80%以上の確率で生検を行うとがんがみつかります。(Prostate Cancer Prostatic Dis. 2019 ;22(1):39-48. Eur Urol. 2020 ;77(1):78-94.)
⑥生検検査
PSA高値、MRI・エコー異常があれば生検検査を行い、確定診断をつけます。
PSAが少しずつ上昇する場合はさらに注意が必要です。
生検検査には、いくつかのアプローチがあります。MRI異常部位をねらうターゲット生検のオプションがあります。(詳細は、② 前立腺生検についての情報をご参照ください)
MRI異常部位があれば、その部位をより正確に採取することができる生検方法があります。(MRI/エコー融合標的生検)
この生検は、日本においては2016年から先進医療で行われていましたが2022年4月から保険適用となりました。
施設基準を取った施設で可能です。ただし、通常の生検でもMRI異常部位を狙う生検は可能です。(Cognitive ターゲット生検といいます)
ここは、各施設で担当ドクターに相談してみるのがいいと思います。
(つぶやき)
自分は、カナダ、トロントに留学していました。海外ではものすごい有名な先生が生検を自ら行っていました。
その先生曰く、それだけ生検による診断は重要だとおしゃってました。
生検も手術と同様に誰が行うかも重要ですし、自分はより正確な生検診断は治療選択や治療後の経過にもメリットがあると思っています。
Q2)PSA高値どっちの患者さんがより注意?PSA変化率について
今日はクイズ形式でどちらの状態がより前立腺がんに注意か考えてみましょう
わかりますか?正解は
Aの患者さんももちろん次回低下する、一過性に上昇した可能性があります。
ただし、これが本当のがんによる上昇であれば注意が必要です。
また、もちろんBの患者さんも高値が続いているので注意は必要です。
いずれもPSA再検査やMRI検査、エコー検査などを行い総合的に生検検査が必要か判断する必要性があります。
PSA変化率の正常範囲は下記のとおりです。これ以上の上昇は注意が必要です。
繰り返しますが、上昇したからすべてがんというわけではありません。
一過性に上昇することはよくありますので誤解がないようにお願いします。
Q3)PSA高値どっちの患者さんがより注意?PSA濃度について
それではもう一問どうでしょうか?
どうでしょうか。答えは、
もちろん、どちらもPSAが正常範囲を超えていますので前立腺がんのリスクがあります。
同じPSAでもより前立腺サイズが小さいほうががんのリスクは高いと考えらえれています。
PSA濃度
PSA濃度という考え方があります。
そもそも前立腺の正常体積は20-30㎝3前後で、年齢とともに緩やかに増大していきます。
これが、前立腺肥大です。前立腺肥大症は加齢に伴う現象ともいえます。
一般的に、前立腺肥大症と前立腺がんの直接的な関係はないと考えられています。
PSA濃度の正常値は0.15ng/mL/cm3以下と考えられています。
一概にこの範囲を超えたからすべて前立腺がんが危険というものでもありません。
PSA変化率、MRIやエコー所見などを総合的に検討して生検を行うべきか判断します。
Q4)最近聞いた、phi(プロステートヘルスインデックス)採血って何ですか?
phi とは、PSA高値で前立腺がんを疑う場合に測定可能な血液マーカーです。
もともと前立腺がんにより特異的な血液マーカーとして期待されてきた血清中の[-2] proenzyme prostate specific antigen([-2]proPSA)といった項目を組み入れたインデックス検査です。2022年11月に保険収載されました。
簡単に言うと、[-2]proPSAといった物質は前立腺がん組織中に蓄積しやすく、がんの微小な血管への拡がりにより血液中に漏れ出すため、通常前立腺がんの腫瘍マーカーとして測定しているPSAよりもより前立腺がんに特異的なマーカーと考えられています。(Journal of Urology. 2020; 203: 83-91.)
注意は、PSAが異常値だから全員に測定できるものではありません。以下の場合に保険診療で測定可能です。
- (1)前立腺特異抗原(PSA)値が4.0ng/mL以上かつ10.0ng/mL 以下
- (2)50歳以上65歳未満であって、前立腺特異抗原(PSA)値が 3.0ng/mL 以上かつ 10.0ng/mL 以下
- (3)65歳以上70歳未満であって、前立腺特異抗原(PSA)値 3.5ng/mL 以上かつ 10.0ng/mL 以下
となっています。
一般的にPSAグレーゾーンと呼ばれる範囲で、上記に該当する患者に対して、前立腺癌の診断の確定又は転帰の決定までの間に、原則として1回を限度として測定できるとなっています。
上記のPSA範囲で主治医の先生が必要とした場合に測定することがあります。(繰り返しますが全員に必要な検査ではありません!)
無駄な生検の回避などにも有効となる可能性があります。