過活動膀胱(頻尿・切迫感)
- ① 過活動膀胱とはどんな病気?女性だけでなく男性にも起こるの?
- ② 尿がたまるときの膀胱内圧はどんなふうに変化するの?
- ③ 過活動膀胱、どんな検査が必要ですか?
- ④ 過活動膀胱の治療はどんな治療があるの?
① 過活動膀胱とはどんな病気?女性だけでなく男性にも起こるの?
おしっこのお悩みで、下記のような症状はありませんか?
- 急におしっこがしたくなって我慢できない
- 尿意を我慢できずに漏らしてしまう
- 夜中何度もトイレに行きたくなる
- トイレが怖くてコンサートや映画などに行けない
- トイレが気になって仕事や家事に集中できない
過活動膀胱は、自分の意思と関係なく膀胱が勝手に収縮し、頻尿、尿意切迫感、尿漏れなどを引き起こす病気です。
過活動膀胱の主な症状
過活動膀胱の主な症状は、下記の通りです。
- 頻尿 ・・・・1日に、8回以上排尿する
- 尿意切迫感 ・・・急におしっこがしたくなり、我慢できず漏らしてしまいそうになる
- 夜間頻尿 ・・・夜寝ているときに、おしっこがしたくなり目が覚めてしまう
- 切迫性尿失禁 ・・・急におしっこがしたくなり、トイレに間に合わず漏らしてしまう
このような症状がある場合は、過活動膀胱の可能性があります。
過活動膀胱の原因
原因としては、以下のように分類され考えられます。
神経や脳の病気
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 脊柱管狭窄症
- 頚椎症/腰椎症
- 椎間板ヘルニアなど
婦人科の病気
- 骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)
- 膀胱の病気
- 膀胱腫瘍・結石・感染症など
精神の病気
- ストレス
- うつ病
- 不安神経症
- 不眠症など
その他
- 加齢など
いろいろな原因があります。実際、原因がない場合もよくあります。
加齢により頻尿症状がでることもよくあります。
男性では多い原因のひとつに前立腺肥大症があります。
過活動膀胱は、女性だけでなく男性にももちろん起こります。
性別にかかわらず頻尿症状、切迫感がある場合は、一度、お気軽にご相談ください。
② 尿がたまるときの膀胱内圧はどんなふうに変化するの?
そもそも尿がたまるときの膀胱の中の圧の変化、ご存じですか?
下図、正常はどちらでしょうか。
右が正解で、正常の変化です。
膀胱内圧測定といった検査がありますが、通常、膀胱に時間の経過とともに尿がたまっていきますが、圧は右のように少ししか上昇しないのが一般的です。意外ですよね。
尿がたまると左のように内圧があがりそうですが上がらないんです。
無抑制収縮
その途中で、膀胱が収縮することがあります。
これを、専門的には無抑制収縮といいます。
尿がたまる過程で内圧が一過性に上昇します。
通常はそれを抑えることができるのですが、何か問題があるとそれを尿意と強く感じてしまい排尿することになります。
そうすると尿もあまりたまっていないので勢いも弱く、排尿量も少なくすっきりしません。
診断と治療
原因がある場合は、その原疾患の精査・治療も重要です。
たとえば、脳や背中の神経の問題があるとこうした刺激が強く起こることがあります。
その場合、その疾患の治療で改善することもあります。
ただ、なかなか神経の疾患はすぐに良くならないことも多いです。
症状を改善させるために過活動膀胱の内服治療薬を行う場合があります。
こうした薬を服用することで、無抑制収縮を抑えたり、膀胱の容量を増やす作用で頻尿や切迫感、排尿回数を改善することができます。
③ 過活動膀胱、どんな検査が必要ですか?
過活動膀胱の症状を認める場合、いくつかの検査が必要です。
大事なポイントは、原因となっている疾患があるかないかです。
がんが隠れていないかチェックしましょう
特に注意が必要なのは膀胱がんなどの悪性腫瘍です。
多くは原因がはっきりしないこともありますが、がんや結石や感染症も原因となることがあるため精査が必要です。
以下のような検査を行います。
① 問診
OABSS(過活動膀胱症状質問票)といった過活動膀胱専用の問診を行います。
② 尿検査
血尿や尿中に白血球がないかなど確認します。感染症を疑う場合は、尿の培養検査などを行うこともあります。
③ 残尿測定検査・尿測定検査検査
尿の残りが多くないか確認します。
残尿が多い場合、別の神経疾患で膀胱機能が低下していることもあります。
通常、残尿は50ml以下が正常です。多い時は注意が必要です。
④ エコー検査
エコー検査では、腎臓・膀胱・前立腺などを確認します。
結石や腫瘍など頻尿の原因となる疾患がないか確認します。
⑤ 尿細胞診検査
尿路がんのスクリーニング検査として、尿細胞診検査を行います。
ただし、尿細胞診は陰性でもがんがあることもありますのでご注意ください。
⑥ PSA検査(男性)
男性では、前立腺がんのスクリーニング採血検査も行います。
⑦ その他
そのほか、原因精査として必要な検査を適宜行います。
OABSS 過活動膀胱症状質問票
以下、それぞれの質問に回答してみてください。この1週間で最もご自身の症状に近いものをお選びください。
過活動膀胱 重症度判定
重症度 | OABSS合計スコア |
---|---|
軽症 | 5点以下 |
中等症 | 6から11点 |
重症 | 12点以上 |
3番目の点数が2点以上で、全質問の総合点数が3点以上であれば過活動膀胱と診断されます。
④ 過活動膀胱の治療はどんな治療があるの?
治療の中心は、お薬の治療になります。
内服薬には以下のような種類があります。
① β3アドレナリン受容体作動薬
β3アドレナリン受容体作動薬は、膀胱のβ3アドレナリン受容体を刺激することで膀胱を広げ、尿をためる作用で症状を改善させます。
② 抗コリン薬
抗コリン薬は膀胱が勝手に収縮してしまうのを抑えるためにムスカリン受容体をブロックする働きで、切迫感などを改善させます。
③ α1アドレナリン受容体阻害薬
男性では前立腺があるため、前立腺肥大症に対する薬剤として前立腺の緊張を緩める薬剤としてα1アドレナリン受容体阻害薬があり、本薬剤の使用により過活動膀胱の症状が和らぐ場合があります。
- ④ 漢方薬
- ⑤ その他
薬を飲み始めてから約1週間~1ヵ月程で効果が現れてきます。
その後は、検査しながら薬の量を調節していきます。薬剤をいくつか併用する場合もあります。
継続するか中断できるかは原因および症状の改善具合によります。
その他の治療
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
難治性過活動膀胱の治療としてボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が2020年から保険適用となりました。
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法とは、ボツリヌス菌がつくる天然のたんぱく質(A型ボツリヌス毒素)から精製された薬を膀胱内に直接注射する治療法です。
膀胱鏡という内視鏡を用い、膀胱の筋肉に直接、薬を注射して、膀胱の異常な収縮を抑えます。外来でも治療可能です。
以下が本治療の対象です。
- 4週間以上の内服治療を受けているが、十分な効果がなく尿失禁が改善されない過活動膀胱の患者さん
- 2週間以上の内服治療を受けたが、副作用の為、服薬が減量あるいは中止になったか過活動膀胱の患者さん
治療適応、副作用はよくご相談ください。