尿膜管膿瘍(のうよう)・臍炎(さいえん)
(おへそから膿がでる、おへそが痛い)
- ① 尿膜管膿瘍・臍炎とは、どんな症状がでるの?原因は?
- ② 尿膜管膿瘍・臍炎の診断は?どんな検査が必要?
- ③ 尿膜管膿瘍・臍炎の治療は?最近の手術療法について
- ④ 尿膜管の病気はがんになるってホント?
① 尿膜管膿瘍・臍炎とは、どんな症状がでるの?原因は?
尿膜管とは、胎児期のおへそと膀胱をつなぐ管の索状の遺残物です。
通常は、消失するか索状物が残ることがありますが、そこに管腔のスペースが残ることがあります。
尿膜管遺残はいくつかのタイプがあります。
尿膜管膿瘍(のうよう)は臍から臍直下の尿膜管にスペースがあるもの、これを尿膜管洞といいますがそこにバイ菌がたまり炎症を起こしたものです。
臍の下のトンネルのようなイメージです!
症状は、おへそから膿(うみ)がでる、おへそが赤い・痛い、下腹部痛、おへそから嫌なにおいがするなどです。
ここでおへそのみの炎症の臍炎(さいえん)があります。
比較的皮下脂肪が多く、おへそが深く埋まっている患者さんは、おへそのみの炎症の臍炎を起こす場合があります。
ここは尿膜管膿瘍との鑑別が必要です。
また、尿膜管膿瘍は臍炎を合併することも多いです。
ここは、適切な検査、診断を受けましょう!
尿膜管膿瘍・臍炎は、10から30歳台の比較的若い方に起こることが多いです。
おへそから膿が出る場合は注意です。まず、ご相談を!!
② 尿膜管膿瘍・臍炎の診断は?どんな検査が必要?
おへそから膿がでる、痛いなどの場合、検査を行います。
画像検査は、エコー検査やCT/MRI検査によって遺残の有無を確認します。
おへそからの膿(うみ)に関する細菌培養検査を行うことがあります。
また、画像で膀胱側の尿膜管に異常を認める場合は、尿細胞診検査(尿中に悪い細胞がないか見る検査)や膀胱鏡検査を行う場合があります。
これは、尿膜管がんを疑う場合に行います。
通常の尿膜管膿瘍は、おへその直下のみの所見が多いため、これらの検査、特に膀胱鏡検査は必須ではありません。
慈恵医大で、約300例の治療経験から尿膜管膿瘍で尿膜管がんを合併した例はありませんでした。
基本、尿膜管がんは膀胱側に出来ることが多いので臍直下に出来ることは、可能性は低いと考えられています。
③ 尿膜管膿瘍・臍炎の治療は?最近の手術療法について
尿膜管膿瘍の治療は、まず、薬物療法です。
抗生剤の投与を行います。
症状が強い場合は、点滴加療を行う場合があります。
画像検査で臍直下に膿瘍(うみ)のたまりが大きい場合は、ドレナージを行う場合があります。
局所麻酔で、おへそから足側に切開をおくことがあります。(バイ菌を外に出すようにします。)
また、その部位を洗浄することがあります。
洗浄、消毒の処置は、数日から1週間程度必要な場合もあります。
手術は、炎症を繰り返し起こす場合に行います。
2014年4月から腹腔鏡下尿膜管摘出術が保険診療で受けられるようになりました。
腹腔鏡手術は、小さい約3から4カ所の創で手術が行われるため、整容性に優れた術式であると考えられています。
さらに最近では、1カ所の創で手術を行う単孔式手術(single port surgery)や、ポートの創を減らしたreduced port surgeryなども日本で行われています。
それぞれの手術に適応やメリット、デメリットがありますので各施設でお問い合わせください。
慈恵医大泌尿器科ホームページから引用
私は、腹腔鏡下尿膜管摘出術のガイドライン委員を務めておりました。
また、2018年には、reduced port surgeryで泌尿器内視鏡学会賞を受賞させていただきました。
それぞれの手術に適応やメリット、デメリットがあります。
治療や、手術に関するご質問はお気軽に当院までお問い合わせください。
④ 尿膜管の病気はがんになるってホント?
尿膜管遺残があるとがんになるって聞きます?本当ですか?
答えは△です。
尿膜管がんは膀胱側に出来ることが多いです。
尿膜管構造が残りそこに慢性の炎症が起こると発がんするリスクがあります。
現時点で、どのような患者さんに尿膜管がんができるかといった十分なエビデンスはありません。
尿膜管膿瘍は、基本、臍側の問題ですが膀胱側に炎症はなくても内腔組織が残っている症例もあります。(手術検体から)
膀胱側の尿膜管遺残、尿膜管のう胞などで少しでも異常な所見があるときには尿膜管がんの注意が必要です。
「炎症を繰り返しているので、がんになるから手術しましょう」
これは、正しいとはいえません。
おへその炎症でがんが発生するのではなく、膀胱側の尿膜管遺残の慢性炎症で起こる可能性があります。
どこまで関連があるかなどまだまだ、分かっていないことが多いとご理解ください。
まず、手術を勧められた患者さんは、画像所見、がんを疑う可能性があるかないか聞いてみましょう。
また、本当に手術すべきかどうかはよく相談してみてください。