梅毒
① 梅毒の原因は?最近増えているの?
梅毒は、梅毒トレポネーマといった細菌によって起こる性感染症です。
性行為によって、皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することで感染がおこります。
傷から入った梅毒トレポネーマは、血液に乗って全身に広がり、時間が経過していくと皮膚や内臓に様々な症状を引き起こします。
梅毒は2012年ごろまでは、年間500-900人前後で推移していましたが、2013年は1228人、2018年には7002人と報告されており急激に増加してきています。(NID国立感染症研究所、感染症発生動向調査)
梅毒は、異性間性交渉での感染が大半を占め、特に、2012 年から 2020 年第 2 四半期までずっと、20 代前半の 女性の罹患者が最も多かったことは憂慮すべき事態と考えられています。(環境感染誌 Vol. 36 no. 1, 2021)
最近も引き続き増加傾向であるため、リスクがある場合は、症状の有無にかかわらず、血液検査を受けることを推奨します。
② 梅毒どんな検査を行うの?梅毒の病期(ステージ)とは?
梅毒の症状は、多岐にわたります。
特徴は、時間の経過で症状が出現しますが、未治療でもその症状が消えて、次のステージに進行していきます。
よって、例えば、皮疹が出て時間で消失したからといって治っているという意味ではありません。
あくまでも治療をしないと治りません。
ステージは、下記の通りです。
最初の潜伏期間は約3-4週間です。
その後、陰茎部のしこりやただれなどができることが多いです。
この時期、ヘルペスとの鑑別となることも多いですが、ヘルペスと異なりあまり痛みなどの症状がないことも特徴です。
不安な行為から3-4週間でこうした症状が出現する場合は、積極的に検査を受けましょう。
また、無症候性の梅毒もあります。あまり症状が出ないものです。相手にリスクがある場合も適宜検査を受け確認しましょう。
検査について
検査は血液検査を行います。
- 非トレポネーマ検査(RPRなど)
- トレポネーマ検査(TPHA、FTA-ABS法など)
の検査があります。
簡単に述べますとRPR法は活動性を、TPHA法は感染の有無を評価します。
検査結果の解釈
RPR | TPHA | 結果 |
---|---|---|
- | - | 感染なし。もしくは感染直後潜伏期あるいはHIV感染の影響 |
- | + | 梅毒感染の既往。もしくはごく早期か後期の感染状態 |
+ | - | 感染早期。生物学的偽陰性(検査だけ陽性で感染していないという意味) |
+ | + | 活動性梅毒 |
よく行われているクイック検査(即日検査)はTPHA法によるものです。
よって、梅毒の既往がある方は陽性になりますので検査する意味がありません。
以前感染があった方は、抗体の定量検査をお受けになるのがベターです。
クイック検査陽性の場合、既往がない方は、RPR法またTPHA法の抗体価の定量検査が必要で実際にどのくらいの数値であるか確認する必要性があります。
治療を行うと抗体価は低下します。
RPRは陰転化することも多いです。
ここは、梅毒の専門治療が行なえるクリニック・病院を受診する必要性があります。
もちろん、この検査および検査陽性で治療期間は性行為をふくめた危険行為は控える必要性があります。
日本性感染症学会から梅毒診療ガイドライン(梅毒:性感染症診断・治療ガイドライン 2020,2020. p. 46-52.)が発行されており、ネットでもアクセス可能です。
ご参考にしてみてください。
③ 梅毒の治療は?
梅毒の治療は抗菌薬の投与です。
ペニシリン系の抗生物質を使用します。
ペニシリンアレルギーがある患者さんは、別の系統の抗菌薬を使用します。
4週間を基本の投与として、4週間ごとに抗体価を測定し、治療効果を判定していきます。
各ステージ、薬の種類によって薬の投与期間などは、変わります。
よくご相談ください。